「ホルムズ海峡閉鎖なら原油高?」日本株市場への影響は?

6月24日、トランプ大統領ははイランとイスラエル間で『完全かつ全面的な停戦』が合意されたと発表し、原油需給の緊張緩和を受けて原油価格が一時下落しました。
ただし、発効直後に両国の小競り合いやミサイル攻撃が報じられ、完全に停戦となるかは不透明さが残ります。
6月24日の日経平均株価は停戦合意の発表を受けて、前日の終値「38,354.09円」から「38,790.56円」まで上昇(+1.14%)しています。
ホルムズ海峡封鎖リスクが現実味を帯びる
2025年6月22日、イランの国営メディア(プレスTV)は、イラン議会がホルムズ海峡の封鎖を承認したと報じました。ただし、実際の封鎖を実行するには国家安全保障最高評議会の決定が必要であり、現時点では封鎖が行われたわけではありません。
中東のホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾をつなぐ海上の要所で、世界の原油や天然ガスの約20%がここを通過しています。
日本を含む多くの国がエネルギー輸入でこの海峡に依存しており、海上輸送の封鎖は世界経済に影響します。
もしホルムズ海峡が封鎖されれば、原油価格の急騰が予想されます。
- 輸入コストの上昇が収益を圧迫し、国内のインフレ要因になりうる
- 「有事の円買い」で円安傾向が反転する可能性があるため、輸出産業にとってはマイナス影響
- 国防関連銘柄などには買いが入る可能性もある
今後は、イランの動向と国際社会の対応が、金融市場全体に影響を与える重要な材料となりそうです。
イラン議会が封鎖を承認
少し注意したいのがイランの議会が封鎖を承認してはいるものの、これは決定事項でない可能性が高い。
現段階においては6月22日にイランの国営メディアが発表している通り、ホルムズ海峡の封鎖は決定事項でなく最終判断は国家安全保障会議に委ねられている段階にある
「議会はホルムズ海峡を閉鎖すべきとの結論に達したが、最終決定は最高国家安全保障会議にある」とコウサリ氏は述べた。
“The parliament has come to the conclusion that it should close the Hormuz Strait, but the final decision lies with the Supreme National Security Council,” Kowsari stated.
イランの国営メディアより引用
ホルムズ海峡の重要性とは
今回のホルムズ海峡封鎖はについてなぜこれだけ世界で騒がれているのでしょうか?
それは、この海峡は世界経済の要と言える重要な海上輸送ルートだからです
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ細く長い海峡で、世界の原油・LNGの約20%がこのルートを通過する極めて重要な海上輸送 chokepoint(ネックポイント)です。
特に、2024年には原油のみならず液化天然ガス(LNG)貿易の約20%がここを通過し、サウジアラビアやUAEなど主要産油国もすべてこの海峡を利用している状況です。
代替輸送ルートは限られており、サウジアラビアの東西パイプラインやUAEの陸上ルートでは輸送量を十分に補えない可能性があり、閉鎖が実現した場合の影響は大きくなることが想定されます
日本株への影響はどうなる?
原油価格への影響
世界の原油需要は、短期間で急激に減少するものではありませんから、原油の供給が減れば、必然的に原油価格は高騰します。
原油価格の上昇は、石油製品や輸送コストの上昇を引き起こし、企業の収益を圧迫する要因となります。
企業がコストの上昇を吸収しきれない場合、最終的には価格転嫁を通じて消費者が負担することになりますが、その場合は消費者の購買量が減るといった可能性もあり最終的には企業業績への悪影響が懸念されます。
ホルムズ海峡の閉鎖は日本企業への悪影響が大きいと想定されますが、閉鎖の実現可能性や閉鎖された場合でも、
閉鎖期間が長期化するのか、それとも短期間で事態が収束するのかによって日本企業への業績影響は大きく異なってきます。
6月23日の日経平均株価の終値は「38,354.09円」(先週から−49.14円下落)となっており、現時点においてはイラン議会による閉鎖の承認について重大な懸念として受け止められていないように見受けられます。

為替・円安/円高の動き
一方で、為替はドル/円のチャートを見ると、「有事の円買い」と言われますが、6月23日の20:00時点において「148円」まで円安が進行しています。
※つまり、円が買われず、逆に売られている状況です
148円代まで上がった後も引き続き147円台と円安水準トレンドを維持してます。

セクター別注目ポイント
日本株の中でも今回のホルムズ海峡閉鎖など中東情勢悪化を受けて、業績に影響しそうな企業をピックアップしてみました!
今後の株価の推移に注目です
- エネルギー関連(商社、石油開発)
- 輸出関連(自動車、機械)
- 消費関連(小売、運輸)
エネルギー関連(商社、石油開発)
想定される動き:株価上昇が期待される
- 原油価格の急騰は、資源権益を持つ商社や石油開発企業にとってプラス材料と考えられます
- 例えば商社大手(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事など)は、石油・LNG事業の収益増加が期待されます
- 石油開発会社(INPEXなど)も、原油市況連動型の収益構造のため、上昇期待が強まります
輸出関連(自動車、機械)
想定される動き:短期的に方向感が分かれる可能性
プラス要因とマイナス要因がそれぞれありますが、2026年3月期の業績を考えると原油高によるコスト増加をより重く考える必要があると個人的には考えます
- プラス要因:円安が続く場合は、為替差益が収益を押し上げる(トヨタ、ホンダ、日産など)
- マイナス要因:原油高は部品輸送コスト・物流費・材料費上昇に波及し、コスト増要因に
消費関連(小売、運輸)
想定される動き:全体的にマイナス影響が大きい
- 原油高は輸送コスト・物流コストを直接押し上げ、小売・運輸業の利益率を圧迫
- 消費者向け価格転嫁が難しければ、小売業(イオン、セブン&アイなど)はコスト負担増